計装 - プラントエンジニア
前回はプラントエンジニアの職種全体について、書きました、今回は計装についてです。
私自身、計装という言葉を当たり前に使っていましたが、計装って何の略なんでしょうね?
天下のwikipediaさんから引用すると、「計装(けいそう、Instrumentation)とは、生産工程等を制御するために、測定装置や制御装置などを装備し、測定することなどをいう。」だそうです。
私の感覚から言うと、「計測制御装置」の略かなぁと思います。
さて、計装職種が担当する計器は次の様な物があります。
・圧力計
・液面計
・流量計
・温度計
・分析計
・調節弁・遮断弁
・DCS
・上位情報収集系
もちろん、各石油化学メーカーによって、微妙にカバー範囲は異なります。
圧力計等は読んで字の如くなのですが、分かりにくい物については説明を追加しますね。
■分析計
分析計と聞いてどんな計器を思い浮かべるでしょうか?
例えば、容器内のガスの成分って何だろう?と思うと、ガス分析計が必要になります、これはガスクロマトグラフ等が挙げられます。
例えば、海や川へ排水を放出したい場合に、この排水やばい物が含まれてないよな?と思うと、排水分析計が必要になります、全リン・全窒素系等があります。
例えば、危険なガスが漏洩した時警報を鳴らしたいと思うと、ガス検知器が必要になります。活火山に入る時などは、ポータブルのガス検知器を持っていきますね。
他にも様々種類がありますが、要するに、水や空気等の成分を計測する物になります。
■調節弁・遮断弁
弁(バルブ)が計装の対象なの!?と思われる方も居るかもしれません。
計装はプラントの制御を担当しています、どういう事かと言うと、例えば「圧力計で圧力を監視しながら、目的とする圧力を維持する。」という事です。
もし、実験室レベルであれば、これは人間がやっているかもしれません、つまり、「圧力ゲージを見ながら、人間がバルブを操作して、目的とする圧力を維持する。」という事です。
しかし、プラントレベルになると、バルブはかなりの数があるので、人間がいちいちそういう事をしている訳にはいきません。
という訳で、制御装置+調節弁という運用をする訳です。
例えば、容器内の圧力をが0.8MPaGだったとしましょう。これを1MPaGにしたいと制御装置に入力すると、制御装置から「1MPaGにしなさい!」と調節弁に信号が行き、調節弁が動く訳です。
ところで、プラント内にはもちろん、人が動かさなければならないバルブも存在します、これは計装の範囲には入りません。
調節弁は制御装置から信号を受け取って自動で動きますので、自動調節弁と言われたりもします。
次に、遮断弁についてですが、遮断弁は基本的に開か閉かの二位置です。
プラントに異常があった時、爆発火災等が起きないように、原料供給等を遮断します。
プラントに異常がある、という事を検知するのは、もちろん計測器です。そして、異常を検知して、遮断弁に信号を送るのは、制御装置です。よって、計装の対象範囲となるわけです。
■DCS
これは一般の方には全く馴染みのない物ですね。wikiから引用しますと。
「分散制御システム(ぶんさんせいぎょシステム、英語: distributed control system、略称:DCS)は、制御システムの一種で、制御装置が脳のように中心に1つあるのではなく、システムを構成する各機器ごとに制御装置があるもの。」
これを読んでも、やはりさっぱり分かりませんね。
しかし、上記の文章を完璧に理解しなくても大丈夫です。
皆さんの家には、お風呂用の給湯器があるかと思います。
最近の物ですと、住居内にあるコントロールパネルで「40℃のお湯に浸かりたいな」と希望して、スタートを押せば、自動でお風呂にお湯が溜まりますよね?
という事は、どこかで「水が40℃になるように加熱して、そのお湯を浴槽にへ供給する。」という事がどこかで行われているはずです。
この、コントロールパネルが制御装置であると考えて下さい。
ところで、概ね一つの家には一つの浴槽しかありませんが、もし仮に、浴槽が10個、100個とあったらどうでしょう?
コントロールパネルも10個、100個と必要で、それぞれに対して希望温度を設定する必要があります、とても大変な様な気がしませんか?
これを統合して、例えばパソコンから1画面で操作出来る様にしたら、DCSっぽくなるのです。
※厳密に言えばDCSと言えませんが、そういう物だと思って入ると楽です。
調節弁の説明で触れましたが、計器で測定し、制御するという事がプラントの中ではかなりの数で行われています。
これを実現するのがDCSというブツなのです。
■上位情報収集系
最近の情報通信技術の進化によって、重要度が増してきた項目です。
上で説明したDCSでは様々な計測器からの情報を収集し、かつ、調節弁等へ信号を送っています。
プラントは原則、年中24時間、稼働しています。
例えば、機器に故障が発生した場合、壊れる前に何か兆候があっただろうか?と思います。
例えば、1年を通じて効率良く運転出来ただろうか?とか思います。
そういった時には、計測したデータを遡って確認したいですよね?そういう時に役立つのが上位情報収集系です。
DCSが計測・制御した結果を、収集して保存しておいてくれます。プラントの中の人は、場内のネットワークを介して、自分のパソコンから、その記録を見ることができます。
「あ、1か月前にはもう故障し始めていたのか。」とか、「先月の運転には問題なかった様だ。」とか、迅速な判断が可能になる訳です。
最近、ビッグデータという言葉が良く出てきますよね?上記の様に集めたデータもビッグデータです。
データはただ集めるだけでは意味がありませんが、データの中に何か傾向を見出す事が出来れば、それはとても強力な武器となります。
例えば、「あ、雨の日は熱が逃げて効率が悪くなっているぞ。それでは、雨の日は加熱器への燃料供給を増やすようにしよう・・・」とかですね。
石油化学メーカーの強みというのは、機器メーカーから購入した機器を、独自の技術で動かして製品を作る事、ですから、集められたデータはその石油化学メーカーの集大成の一つと言っても良いですね。
今回の記事は、ここまでにします。